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「あの負けから学んだことがたくさんあって…」全日本ラージ王座奪還・池田亘通が語る〈前編〉

2024年10月04日

 9月に行われた全日本ラージボール選手権一般男子シングルスで2年ぶり4度目の優勝を果たした「わった」こと池田亘通(Infinity)。王座奪還を果たした今大会の戦いぶり、優勝を逃した前回大会からの変化、昨年開業した自らの卓球場のことなど、「今の池田亘通」について語ってもらったインタビューを前・後編に分けてお届けする。

◆「こんなに応援してもらって、その期待に応えられないとカッコ悪いな」と思っていた

●─まず、2年ぶりの全日本ラージボール選手権優勝おめでとうとうございます。

池田亘通(以下:池田) まずは全力でサポートしてくれた妻(佳乃)と、応援していただいたたくさんの方々に感謝です。去年、自分の卓球場(卓球スタジオInfinity)をオープンしてから、レッスンを受けに来てくださったり、本当にたくさんの方にオフラインで直接会って応援してもらう機会が増えたんです。「こんなに応援してもらって、その期待に応えられないとカッコ悪いな」と思って頑張れました。

●─2017年の全国ラージで初出場・初優勝して、2018年からは全日本ラージでも連覇してきたのに、昨年は決勝で負けてしまった。初めて経験した「チャンピオンじゃない1年」はどうでしたか?

池田 去年、負けた瞬間はマジで悔しくて(笑)。でも、あの負けから学んだことがたくさんあって。決勝で負けた橋本(啓)選手はラージを「ガッツリ」というより「ラフ」にプレーしてる感じがあって、技術もですけど、橋本選手のそういう姿勢というか考え方は自分にはなかったので勉強になりました。
 去年はメンタルが崩れて負けてしまった感じですけど、それを負けた直後に言うのはダサいじゃないですか。そこは反省して、今回はメンタルを整えることに一番時間をかけて取り組みました。本来の調子、実力を出せるようにしようと思っていました。

●─メンタルを整えるって、具体的にはどういうことなんでしょうか?

池田 卓球への取り組みもですけど、それ以外でも去年までは個人事業主だったのを4月から法人にして、代表取締役になって、また新しい仕事を始めたり、どんどん新しいチャレンジをして。そうやって過ごしていると、人としてのレベルが上がる感じがあるんです。卓球だけというよりは毎日を全力で生きていった結果として、メンタルが自然と底上げされて、充実していく感じですね。
 フェリックス・ルブラン選手からも影響を受けました。オリンピックでの、どんな舞台であっても自分を堂々と出してプレーしている姿。あれを見て、緊張感を持ちすぎず、良い意味でマイペースに自分の試合運びをしようと思えた。
 あとは去年負けたので、少し力を抜いて楽しめたのも事実。初出場からずっと勝ってきて、精神的にはすごく追い込まれていたんです。一度負けを経験したので、その失敗は2度としないと思っていました。

●─負けたことで執着みたいなものがなくなった。

池田 勝ち続けると、勝ちしか見えなくなっちゃうんですよね。だから、それと戦って勝ち続けるプロの選手ってスゴいなと思います。ぼくはプロでもないのに、去年までは考えすぎていた部分があったので、そこは変えました。ラフに取り組む部分としっかり取り組む部分をしっかり区切ることで、メンタル的にもしっかり準備できたのかなと思います。

●─技術面では何か変えたことはありますか?

池田 去年までは「硬式は硬式、ラージはラージ」ってキッチリ区切ってやっていたんですけど、「ラージで強くなるにはどうしたらいいのか」って考えた時に「もう少し硬式のテイストを入れないと強くなれないな」って思ったんです。橋本選手のプレーもそうですし、若い選手も増えてきて、彼らの新しいスタイルに勝つには「ラージっぽい戦い方」だけでは限界があるなと感じていました。
 メンタル的にラフになったのも大きくて、今まではカチッと型にはまったプレーばかりしていたけど、攻撃を増やしたり、意外性のあるプレーや遊び心のあるプレーを混ぜるようにしました。硬式ももっと強くなりたいと思ってやっているので、その中でラージに転用できる部分は取り入れて、うまくプレーできたのかなと思っています。

●─準決勝で千葉(悠平)選手にゲームを取られた以外は、「完勝」という印象でした。

池田 去年、決勝で負けた試合を除けば、今まで全国ラージと全日本ラージに出場してきた中で千葉選手との試合が一番キツかった。硬式でも強くて、爆発力のある選手だし、1ゲーム取られて厳しい部分はありました。ただ、そこで崩れないように準備してきたので、最後に踏み止まることができたと思います。
 それ以外は比較的自分の思った通りに試合ができたかなとは感じます。あまり競ることもなく、自分の実力で相手を押し切って勝てたので、そこは1年間で成長できた部分なのかなと。自分のメンタル的な部分、技術的な引き出しもこの1年で増えたので、それを出せました。
 一昨年優勝した時は自分の中で150%くらいの実力が出ていた感覚があるんです。でも、今回は自分の100%で、一昨年の150%を越えるようなイメージで準備してきた。そして地力をしっかり出せた、今の自分の100%がしっかり出せたという感じですね。

●─2年ぶりに優勝を決めた瞬間はどんな気持ちだったんでしょうか。やっぱり、今までの優勝とも違った気持ちがあった?

池田 「やり切ったー!」というより、「またスタート地点に立てた」っていう気持ちでしたね。10連覇を目標に掲げていたので、そこから見た時に1回目の優勝はまだまだスタート地点。そこに戻って来れたなっていう感じです。あとは去年負けている分、「ひと安心」というのが強いですかね。でも、うれしかったですよ。さっきも言いましたけど、この1年、オフラインでたくさんの人に会って応援してもらってきたので、自分のことよりも、そういう人たちの期待に応えられたうれしさが大きいですね。(後編へ続く)

【PROFILE】
池田亘通(いけだ・わたる)

北海道出身。尚志学園高(現・北科大高)時代にインターハイ学校対抗で2年連続ベスト16入り。北海道教育大函館校時代に全日学出場。大学3年時の2017年に全国ラージボール大会で初出場・初優勝。翌年からスタートした全日本ラージボール選手権では2018・2019・2022年大会で3連覇を達成(※2020・2021年大会は中止)。今年9月の全日本ラージでは王座奪還を果たす。現在は「わった」の愛称で卓球フリーランスとして活動中

【池田亘通・使用用具】
「自分のやりたいプレーに応えてくれる、バランスの取れたラケット・ラバーを選ぶ」

 試合では対戦相手によってプレーを変える必要があります。そのためには、何か突き出た特徴がある用具よりも、自分のやりたいプレーに応えてくれるバランスの取れたラケット・ラバーを選びたい。
 弾みが抑えめの『ハイブリッドAC インサイド』と、打球感が良くて弾む『リンフォート パワー』の組み合わせは、ラリーで打ち負けず、それでいて台上など細かい技術もやりやすい。全体のバランスが非常に優れていて、ずっと愛用しています。特に『リンフォート パワー』は自分が本当に納得して使える性能を追求して開発したラバーなので、信頼感がありますね。(池田)